研究開発レポート

レポート04
カテキン類含有飲料が花粉症を緩和 ~通年性アレルギーにも効果~

「花粉症」は、一年を通してさまざまな植物の花粉が原因となって、鼻水やくしゃみなどのアレルギー症状を引き起こす病気です。 特に、3月を中心に飛散する“スギ花粉”には、多くの人が悩ませられています。 伊藤園では、緑茶や烏龍茶、紅茶に多く含まれるポリフェノール「カテキン」に、抗アレルギー薬である“トラニラスト” と同等のアレルギー抑制効果があることを確認しています1)2) 。「カテキン類」が含有された飲料でも、同じくアレルギー性の症状を抑えられるかを、 日本薬科大学の丁 宗鐵教授と共同研究を行い確認しました。

1.カテキンのアレルギー抑制効果

「カテキン」のアレルギー抑制効果について、アレルギー情報伝達物質のひとつであるIL-4の遺伝子発現を抑制させることが確認されています3)。 また、「カテキン」が炎症や免疫反応に関わるマスト細胞(顆粒細胞)の活性化を抑制し、かゆみや鼻づまりの原因であるヒスタミンの放出を抑えるとも考えられています。 緑茶では、“やぶきた※1”“べにふうき※2”“ジャスミン茶”など、烏龍茶では“黄金桂※3”“鉄観音※4”などに強いアレルギー抑制効果があります。

茶葉
  • ※1 やぶきた:甘みのある濃厚な滋味と優雅な香気が特徴の、国内で最も生産量の多い品種。
  • ※2 べにふうき:紅茶用に開発された、やや渋みの強い品種。
  • ※3 黄金桂:中国の福建省安渓(あんけい)地区でごく少量生産される、ほのかにキンモクセイの香りがする烏龍茶。
  • ※4 鉄観音:代表品種である鉄観音種を特別なつくり方で仕上げた、ふくよかな香りのする烏龍茶。

2.花粉症緩和効果

当社は、「カテキン類」を含む飲料の花粉症への効果について、2005年に日本薬科大学と共同研究を行いました。 試験では、各種カテキンに加えて、カテキンの一種であるエピガロカテキンガレートの一部がメチル化された“メチル化カテキン”を含む“黄金桂”を 紙容器に充填した飲料3本250 ml(一日3本、750ml)を使用しました。

カテキン類含有飲料中の各種カテキン量(一日摂取量)

成分 含量(3本(750ml)中)

エピガロカテキンガレート(EGCG)
エピガロカテキン(EGC)
エピカテキンガレート(ECG)
エピカテキン(EC)
ガロカテキンガレート(GCG)
ガロカテキン(GC)
カテキンガレート(CG)
カテキン(C)

96.0mg
50.6mg
18.4mg
16.3mg
89.2mg
88.2mg
14.2mg
17.2mg

カテキン8種合計 390.1mg
エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル)ガレート(EGCG3”Me) 10.5mg
ガロカテキン-3-O-(3-O-メチル)ガレート(GCG3”Me) 13.5mg
メチル化カテキン合計 24.0mg
カテキン類合計 414.1mg
(参考)カフェイン 156.6mg

新納仁ら, J. Trad. Med., 25, 10-17, 2008より改変

試験は2005年2月3日から3月16日までの6週間、東京近郊に在住し、比較的軽度のスギ花粉症状を有する成人18名(男性11名、女性7名)を対象に行いました。 試験群9名、対照群9名に分け、試験群はカテキン類含有飲料250mlを1日3本、対照群は試験群の10分の1濃度の飲料を同量、それぞれ中身の見えない容器に入れて試験を行いました。 試験期間中、スギ花粉症の症状が耐えがたくなった場合には、医師の確認のもとにレスキュー薬の使用を許可しました。 試験飲料を6週間連続して摂取し、1週間ごとに自覚症状、問診、身体測定、血液検査および尿検査の各項目のほか、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、涙目、目のかゆみ、頭重感、嗅覚異常などの 自覚症状および日常生活の支障度の変化について検討しました。 試験期間中のスギ花粉は3週間目から飛散が開始し、5週間目以降は例年にない多くの花粉が飛散しました。

試験結果は、カテキン類含有飲料を摂取することにより、主たる症状である鼻症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)と目の症状(目のかゆみ、涙目)および生活の支障度について、 対照群と比較して有意な差が見られました。薬の使用頻度は対照群に多く、カテキン類含有飲料を飲用している群では使用頻度が少ない結果となりました。

鼻づまり、目のかゆみ9人の平均値

9人の平均値(1週間のデータ)±標準偏差

有意差あり(*p<0.05, **p<0.01, ***p<0.001) 薬を使用した場合は加点しました。

  • *1 鼻づまり: 鼻水の回数を朝、昼、夕にわけて症状日誌に記入し、合計したものを1日の症状としました。
  • *2 目のかゆみ: 朝、昼、夕それぞれ4段階で症状日誌に記入し、合計したものを1日の症状としました。
    (3 :たびたび目を擦る,2 :時に目を擦る,1 :目を擦るほどではない,0 :症状なし)

薬の使用頻度

薬の使用頻度

9人の平均値(1週間のデータ)±標準偏差
薬は症状が激しく日常生活に支障をきたす場合に服用を許可しました。

新納仁ら, J. Trad. Med., 25, 10-17, 2008より改変

以上の結果から、スギ花粉症において、カテキン類を日常的に摂取することにより、アレルギー症状の緩和と、最発症期における抗アレルギー剤の減量について効果が期待できることが示唆されました。

3.通年性アレルギー性鼻炎にも効果

アレルギー性鼻炎は、スギやヒノキといった植物の花粉が原因となる季節性アレルギー性鼻炎と、 ホコリやダニといったハウスダストなどが原因となる通年性アレルギー性鼻炎に分けられます。先の試験は、 スギ花粉のアレルギー症状緩和効果について確認しましたが、通年性でも同じ効果があるかを、同様の試験を用いて確認しました。

試験は、比較的軽度のくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの複数の症状があり、ハウスダストの抗体試験において陽性反応を示し、 かつ鼻アレルギー診断検査である鼻誘発反応試験もしくは鼻汁中抗酸球検査に対して、どちらか一方でも陽性反応を示した成人20名(男性19名、女性1名)を対象としました。 試験飲料として、カテキン類含有飲料350ml(総カテキン量177.5mg、カフェイン量83.4mg)を1日2本、2週間連続して摂取いただきました。 調査は、アレルギー専門の耳鼻科医の定期的な診察を行い、自覚症状、問診、身体測定、血液検査および尿検査の各項目のほか、 摂取期間中のくしゃみ、鼻水、鼻づまり、涙目、目のかゆみ、頭重感、嗅覚異常などの自覚症状および日常生活の支障度の変化について検討しました。

試験結果は、カテキン類含有飲料の飲用により、医師の診察において鼻症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)が改善することが明らかとなりました。 自覚症状では、鼻症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまり)のすべての項目において改善が認められ、目に関する症状では、涙目、目のかゆみが高値の改善率を示し、 特に目に対しての有効性が示唆されました。さらに、日常生活の支障度も改善されました。

以上の結果から、カテキン類を日常的に摂取することにより、比較的軽度のくしゃみ、鼻づまり、目のかゆみなどのアレルギー症状を有する通年性鼻炎の症状緩和に対して、 効果が期待できることが示唆されました。

自覚症状の推移

前観察 摂取1週間 摂取2週間 後観察
くしゃみ
鼻水
鼻づまり
嗅覚
涙目
目のかゆみ
頭が重い
支障度
3.54±3.50
5.19±5.66
2.40±1.72
1.48±1.64
0.56±1.18
1.07±1.64
0.43±1.24
0.41±0.63
2.96±2.62
4.27±3.58
2.00±1.77*
1.20±1.54*
0.25±0.69***
0.79±1.26*
0.14±0.52*
0.31±0.56
2.73±2.75**
4.39±6.07
1.73±1.79***
0.98±1.56***
0.14±0.43***
0.56±1.05***
0.12±0.44**
0.26±0.51***
2.51±2.45***
4.14±4.67
1.92±1.89*
0.97±1.57***
0.07±0.33***
0.72±1.85*
0.13±0.59**
0.17±0.51***

平均値(1週間のスコア)±標準偏差(n=20) 前観察と比較した時の有意な変動あり(*p<0.05, **p<0.01, *** p<0.001:paired t-test)

新納仁ら, 第22回 和漢医薬学会大会, 2005

伊藤園は、長期ビジョンとして世界中のお客様に「お茶」の伝統から最先端の技術に至るまでの価値をお届けして、 生活提案を行う「世界のティーカンパニー」を目指しています。今後も、長年培ってきた技術力を活かしつつ、 新たな研究分野へもチャレンジを続け、持続可能な成長を追求してまいります。

共同研究者より

伊藤園さんと共同で行った花粉症の試験では、カテキン類含有飲料(一日当たりのカテキン類合計量414.1mg)の摂取によって、 実際にくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの鼻症状や、目のかゆみ、涙目などの目の症状が改善され、飛散量が多くなった時の薬の使用量を減らす効果も認められました。 通年性アレルギーの試験でも、鼻や目の症状が改善することが明らかとなりました。

花粉症や通年性アレルギー性鼻炎の予防としては、マスク、めがねをつけて花粉やハウスダストなどにさらされないようにすることが基本ですが、 これに加えてお茶を毎日飲むことで、症状を緩和する効果が期待できると思います。 毎日飲んでも安全で健康にもよい嗜好飲料としてこれから世界中で緑茶が飲まれるようになるとよいですね。

共同研究者

日本薬科大学学長
丁 宗鐵教授

< 関連文献 >

論文

  • 1)塩崎哲也、杉山清、竹尾忠一 和漢医薬学雑誌11, 444-445 (1994)
  • 2)塩崎哲也、杉山清、中里賢一、竹尾忠一 薬学雑誌117(7)448-454 (1997)
  • 3)Matsushita C, Mizuguchi H, Niino H, Sagesaka Y, Masuyama K, Fukui H. Journal of Traditional Medicines 25, 133-142, 2008.
  • 4)) Niino H, Obara K, Sagesaka Y, Suzuki M, Iigaya N, Ogawa K, Hayashi M, Cyong J-C. Journal of Traditional Medicines 25, 10-17, 2008.

プレスリリ-ス

注)組織名、役職等は掲載当時のものです(2019年2月)