【研究レポート】身体に脂肪をつきにくくする茶カテキン

~「ガレート型カテキン」が、食事の脂肪吸収を抑える~

お盆やお正月などの長期休暇明け、注目される身体の変化の一つに「体脂肪」があります。 「体脂肪」とは脂肪細胞が集まってできた脂肪組織のことですが、その脂肪細胞は、ホルモンバランスを適正に保ち、エネルギー源として中性脂肪を貯蔵するなど、 身体にとって重要な役割があります。しかしながら、運動不足や飲みすぎ・食べすぎなどの影響で、必要以上に蓄積されてしまうと、健康を損なう可能性が高くなります。 伊藤園は、脂質吸収機構の第一人者である池田郁男教授(現 東北大学未来科学技術センター)と共同研究を行い、 茶カテキンの一種『ガレート型カテキン』について、食事の脂肪吸収抑制のメカニズムを科学的に証明しました。

  1. カテキンには種類がある
  2. 『ガレート型カテキン』が食事の脂肪吸収を抑制する
  3. 『ガレート型カテキン』の脂肪吸収抑制効果メカニズム

 

1.カテキンには種類がある

カテキンという名称は、主に8種類あるカテキンの総称です。そのうち、元々茶葉に含まれるカテキンは4種類。 ペットボトルなどに飲料化する過程の加熱殺菌によって、カテキンは熱異性化が起こり、飲料中のカテキンの約50%が熱異性体となります。 従来は、この異性体が測定できなかったため、「加熱殺菌するとカテキン量が減る」と考えられてきました。 現在は、その測定が可能となり、加熱殺菌程度では総カテキン量は大きく減らないことが確認されています。 そして、この異性体も「ガレート型」だけが同様の効果を持つことが分かっています。

 

2.『ガレート型カテキン』が食事の脂肪吸収を抑制する

当社は、『ガレート型カテキン』の継続的な摂取による“体脂肪低減効果”について試験を行いました。 試験は、BMI(※)が22.5~30kg/m2で20歳から65歳までの健常被験者(男性98名、女性97名)に対して、対照飲料3本(対照群)、 試験飲料2本と対照飲料1本(低用量群)、試験飲料3本(高用量群)を12週間毎日、食事とともに摂取していただきました。 1日当たりのカテキン摂取量は、対照群:41.1mg、低用量群:444mg、高用量群:666mgです(ガレート型カテキン摂取量は、対照群:24.9mg、低用量群:430.3mg、高用量群:633mg)。 このような条件下で、身体計測、腹部脂肪面積、血液生化学検査の評価を行いました。 その結果、『ガレート型カテキン』低用量・高用量ともに、BMIが22.5~30kg/m2の被験者の内臓脂肪面積を減少させることを確認しました。

※ボディー・マス・インデックス。体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数。肥満度指数。

Kajimoto O et al. T J Health Sci 2005,51(2): 161-171.

 

3.『ガレート型カテキン』の脂肪吸収抑制効果メカニズム

当社は、池田郁男教授(東北大学未来科学技術センター)との共同研究で、『ガレート型カテキン』の脂肪吸収抑制効果についてのメカニズムを解明しました。 食事の脂肪(中性脂肪)は、そのままの状態では身体に吸収されません。身体の中で、“膵(すい)リパーゼ”と呼ばれる脂肪の消化酵素が働き、脂肪は分解され始めます。 この脂肪分解物が胆嚢(たんのう)から出る胆汁(たんじゅう)によって作られる小さな脂質粒子(胆汁酸ミセル)に取り込まれ、小腸にて吸収されます。 その後、小腸内で脂肪(中性脂肪)は再合成され、血流に乗って輸送され、主に内臓脂肪へ蓄積されます。 脂肪吸収のポイントは、“脂肪は分解されないと吸収されない”ことです。『ガレート型カテキン』は、この“膵リパーゼ”の働きを阻害することで脂肪の分解を抑え、 結果的に脂肪の吸収を抑制します。この他に『ガレート型カテキン』は、食後の血中中性脂肪の上昇を抑制することや、糞便中の脂肪の割合を増やすことも確認されており、 これらは「膵リパーゼ」の働きを阻害することによって引き起こされたと考えられます。

 

伊藤園は、長期ビジョンとして世界中のお客様に「お茶」の伝統から最先端の技術に至るまでの価値をお届けして生活提案を行う「世界のティーカンパニー」を 目指しています。今後も、長年培ってきた技術力を活かしつつ、新たな研究分野へもチャレンジを続け、持続可能な成長を追求してまいります。

共同研究者より

中性脂肪を分解する膵リパーゼは、食事をすると消化管内に分泌されますが、 『ガレート型カテキン』はその作用を抑えて脂肪分解を遅らせているようで、脂肪の吸収を穏やかに抑制します。 また、脂肪吸収がゆっくり進むため、食後の血中中性脂肪の上昇が抑えられると考えられます。カテキンの作用は穏やかで劇的に効くわけではありませんが、 健康のために日々摂取することは理想的と思います。

研究を始めた当初は、特定保健用食品の制度はまだなかったので、機能性を高めたカテキン飲料が世にでるなんてことは考えられませんでした。 伊藤園さんの、商品にしようという意思・意欲が強かったということでしょうね。

東北大学未来科学技術共同研究センター
池田郁男 教授

< 関連文献 >

論文

1)Ikeda I et al. Tea catechins with a galloyl moiety suppress postprandial hypertriacylglycerolemia by delaying lymphatic transport of dietary fat in rats. J Nutr, 2005 Feb;135(2):155-9.
2)Ikeda I et al. Dietary gallate esters of tea catechins reduce deposition of visceral fat, hepatic triacylglycerol, and activities of hepatic enzymes related to fatty acid synthesis in rats. Biosci Biotechnol Biochem. 2005, May;69(5):1049-53.
3) Suzuki Y et al. Dose-dependent suppression of tea catechins with a galloyl moiety on postprandial hypertriglyceridemia in rats. Biosci Biotechnol Biochem. 2005, Jul;69(7):1288-91.
4) Unno T et al. Effect of tea catechins on postprandial plasma lipid responses in human subjects. Br J Nutr. 2005, Apr;93(4):543-7.
5) Kajimoto O et al. Tea Catechins with a Galloyl Moiety Reduce Body Weight and Fat. J Health Sci 2005,51(2): 161-171.
6) 鈴木ら. ガレート型カテキン配合飲料の体脂肪低減作用 日本臨床栄養学会雑誌 2007,29 (2) 72-80.
7) 鈴木裕子ら ガレート型カテキン配合飲料の女性における体脂肪低減作用―ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験― 薬理と治療2009; 37(6): 521-527.
8) 卯川ら. 薬理と治療 2013, 41(9): 919-927.v
9) Kobayashi M et al. Green tea beverages enriched with catechins with a galloyl moiety reduce body fat in moderately obese adults: a randomized double-blind placebo-controlled trial. Food Funct. 2016, Jan;7(1):498-507.

ニュースリリース

・ガレート型カテキンの継続的な摂取による「 体脂肪低減効果 」「 女性のコレステロール値低下作用 」を確認(2007年6月7日)
・ガレート型カテキン配合飲料のメタボリックシンドローム予防効果について(2008年10月9日)
・ガレート型カテキン含有飲料の女性における体脂肪低減作用を確認(2010年5月21日)

注)組織名、役職等は掲載当時のものです(2019年7月)