ペットボトルの開け方で筋力低下を簡便に把握できる可能性を確認

「逆筒握り」が筋力低下のサイン、フレイルの予防に役立てよう。

株式会社伊藤園(代表取締役社長:本庄大介 本社:東京都渋谷区)は、鹿児島大学医学部と共同で、地域在住の高齢者においてペットボトルの開栓動作を評価することにより、筋力低下のサインを簡便に把握できる可能性があることを確認し、この結果を学術雑誌Geriatrics & Gerontology Internationalにて9月11日(月)に発表しました。

2022年の国民生活基礎調査(厚生労働省)によると、介護保険法による要支援と認定された方の主な原因は「関節疾患(19.3%)」が最も多く、次いで「高齢による衰弱(17.4%)」「骨折・転倒(16.1%)」と続き、加齢に伴う「筋力の低下」が原因の一つと考えられるものが上位を占めています。加齢による「筋力低下」は、転倒、骨折、入院、死亡などの健康を害するリスクに関連するため、人生100年時代を見据えた健康寿命の延伸のためには、この筋力低下のサインを早期に認識して早い段階でフレイル(※1)に対応することが重要です。

そこで当社と鹿児島大学医学部は、この筋力低下のサインを早期に認識するために、世界的に普及している「ペットボトル」の開け方(開栓動作)によって簡便に把握できるかを検証しました。すでに、ペットボトルの開栓に困難さを感じることは筋力低下と関係しているとの報告がありますが(※2)、ペットボトルの開け方は個人によって異なるため、この開け方によって筋力低下を把握できる可能性があると仮説を立てました。この仮説を元に、ペットボトルの開け方と筋力低下の関係性を科学的に検証するため、特にキャップを開ける際の握り方と筋力低下の関係を調査しました。

その結果、高齢者において「逆筒握りでペットボトルを開栓していること」が、筋力低下のサインとして有用であることを確認しました。これにより、「ペットボトル開栓の困難さを感じること」に加えて、開栓動作パターンを評価すること(「逆筒握り」か否か)で筋力低下のサインを簡便に把握できる可能性が示唆されました。

今後当社は、筋力低下のサインを簡便に把握できる方法として、ペットボトルの開栓動作が「逆筒握り」か否か評価する方法を推奨し、健康長寿に向けたフレイル予防活動に寄与してまいります。当社は健康創造企業として、飲みものから製品の開栓方法に至るまで、多方面から健康で豊かな生活と持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

〇試験の方法について

2021年垂水研究において、地域在住の65歳以上の高齢者336人(平均年齢74.6歳±5.9歳、女性58.3%)を対象としたコホート研究を実施しました。

参加者には、未開栓のペットボトル製品(「お~いお茶 緑茶」525mlペットボトル)を着席した状態で通常の方法で開けてもらい、開栓の動作を観察し、キャップの握り方を側腹つまみ、逆筒握り、筒握り、3指つまみの4パターンに分類しました。その結果、「側腹つまみ」が248名(73.8%)、「逆筒握り」が55 名(16.4%)、「筒握り」が20 名(6.0%)、「3指つまみ」が13 名(3.9%)でした。次に、筋力は利き手の最大握力を測定し、性別ごとに第1四分位値(男性27.8kg、⼥性18.4kg)をカットオフ値(※3)とし、カットオフ値以下を「筋力低下」としました。

これらをロジスティック回帰分析(※4)した結果、「逆筒握り」は「側腹つまみ」と比較し、筋力低下と有意な関連が認められました。このことから、地域在住高齢者において「逆筒握り」でペットボトルを開ける動作を行うことが筋力低下と関連することが示唆され、ペットボトルの開栓動作パターンと筋力低下が関連することを確認しました。一方、「筒握り」「3指つまみ」では有意な関連は認められませんでした。

 

(※1)加齢により心と体の働きが弱くなってきた状態(虚弱)のことです。健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のことを指しますが、適切な治療や予防を行うことで要介護状態に進まずにすむ可能性があります。
(※2)Geriatr Gerontol Int,2022;22:682–684.
(※3)特定の疾患や状態にあるグループとそうではない群とを分ける値。本研究では、データを小さい順に並べた際の第1四分位値(初めから数えて25%の位置にある値)として、利き手の最大握力のカットオフ値を設定した(男性27.8kg、⼥性18.4kg)
(※4)説明変数から目的変数の発生確率を予測する手法

 

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