お茶由来の「茶殻染色剤」を開発

緑茶飲料の製造時に排出される茶殻をアップサイクル。カテキンの抗菌・消臭効果をプラスした革製品などを製品化予定

株式会社伊藤園(社長:本庄 大介 本社:東京都渋谷区)は、当社独自の「茶殻リサイクルシステム」を活用し、 “茶殻”をアップサイクル(※)した環境と人にやさしいお茶由来の「茶殻染色剤」を2021年6月に開発し、今年度中に加工工程で「茶殻染色剤」を使用した製品を市場展開する予定です。

「茶殻染色剤」は、緑茶飲料の製造時に排出される”茶殻”を原料とし、生地の加工工程において使用する染色剤です。今回開発した「茶殻染色剤」で加工した製品は、茶殻に含まれる緑茶成分のカテキンにより、抗菌・消臭効果を備えています。また、自然由来の”茶殻”を原料としているため、安心して身に付けていただけます。

さらに「茶殻染色剤」は、緑茶成分に含まれるタンニン(カテキンなど)の働きにより、革製品の製造で不可欠な鞣(なめ)し工程において原料皮の防腐性を高め、変形を抑える鞣剤(じゅうざい)としても活用できます。今後、皮革の卸売業などを行っている富田興業株式会社(社長:富田 常一 本社:東京都台東区 以下 富田興業)に「茶殻染色剤」を供給し、富田興業のブランドレザー「LEZZA BOTANICA(レッザ ボタニカⓇ)」から、ベルトや鞄・靴などの革製品を今年中に展開予定です。

当社は、これからもお茶の持つ可能性を追求し、「お茶をお客様の身近な製品へ活用する」というコンセプトのもと、「茶殻リサイクルシステム」をはじめ環境にやさしい製品の研究開発を通じて、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでまいります。
(※)サステナブルなものづくりの方法論のひとつで、リサイクル(再循環)とは異なり、単なる素材の原料化や再利用ではなく、元の製品よりも次元・価値の高いモノを生み出すことで「創造的再利用」と表される

 

<参考1>「茶殻染色剤」の抗菌・消臭効果について

「茶殻染色剤」の抗菌試験結果

生菌数の常用対数値(最大最小値) 抗菌活性値
播種直後 18時間後
「茶殻染色剤」を使用した革製品 4.48(0.1) 3.27(0.4) 3.7
対照試料・標準布 4.51(0.1) 6.94(0.1) 増殖値F:2.4

「JIS L1902:2015 菌液吸収法」に従って「『茶殻染色剤』を使用した革製品」をオートクレーブで滅菌後、約104CFU/mlになるように1/20ニュートリエント培地で調製した菌液(黄色ブドウ球菌)0.2mlを接種し、37℃・18時間で保存後の菌数を測定しました。
★抗菌活性値3以上で強い抗菌効果が認められる

 

「茶殻染色剤」の消臭試験結果

減少率
アンモニア 酢酸 イソ吉草酸
「茶殻染色剤」

を使用した革製品

≧99% ≧98% ≧99%

スマートバックPA(ジーエルサイエンス製)中に「『茶殻染色剤』を使用した革製品」および各ガス(アンモニア、酢酸、イソ吉草酸)を注入し、2時間後のガス濃度を測定し下記の式により減少率(%)を換算しました。
減少率(%)={(コントロールガス濃度―試料ガス濃度)/コントロールガス濃度}×100

 

<参考2>革製品の鞣し工程および鞣剤について

「鞣し(なめ)」とは、革を科学的かつ物理的に操作することにより、革に耐熱性と化学試薬や微生物に対する抵抗性を付加するとともに、表面に革らしさを生み出すために必要な工程です。

鞣し工程の種類には、「タンニン鞣し」「クロム鞣し」「混合鞣し」があり、その工程では鞣剤を使用します。この「茶殻染色剤」を鞣剤として使用する鞣し工程は、緑茶成分のタンニンをいかした「タンニン鞣し」です。

「タンニン鞣し」は古くは紀元前600年頃の地中海沿岸で既に行われていたものです。現代でも「タンニン鞣し」は行われていますが、日本国内で使われる「植物タンニン」の鞣剤はほとんどが南アフリカや南アメリカからの輸入に頼っています。一方で今回開発した「茶殻染色剤」は、そのもととなる茶殻は国産茶葉を原料とした「お~いお茶」をはじめとする緑茶飲料であり、「茶殻染色剤」の生産も国内であるため、輸入コストや輸送にかかるCO2排出量の削減にも貢献します。

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