緑茶と和食の組み合わせによる感覚特性の変化を確認

~緑茶は和食のうま味を引き立てることが期待されます~

株式会社伊藤園(社長:本庄大介 本社:東京都渋谷区)は、緑茶とカツオだしをベースにした和食で、緑茶と和食の組み合わせの効果に関する研究を行いました。この研究により、うま味の強い水出し緑茶は和食(特にカツオだしをベースとした料理)との間にうま味相乗効果を生じ、うま味の感覚特性を高めることが示されました。この研究結果の詳細を2016年11月13日(日)に日本女子大学(東京都文京区)で開催された「日本官能評価学会2016年大会」、および2017年8月29日(火)から30日(水)にかけて日本大学(神奈川県藤沢市)で開催された「日本食品科学工学会 第64回大会」で発表いたしました。

≪経緯 ①≫
緑茶は和食と相性が良いことは経験的に知られていて、食前・食中・食後いつでも愛飲されています。そして食事と一緒に緑茶を飲むことで、和食の味わいを引き立たせ、食間・食後の口腔内を清涼感で満たすなど、様々な効果を実感できます。しかし、このような緑茶と和食の組み合わせによる感覚特性の変化は経験の域を出ていません。そこで、経験的に語られてきた緑茶と和食の組み合わせの効果について、科学的に検証する必要があると考えました。

緑茶にはテアニンやグルタミン酸をはじめとする豊富なアミノ酸が含まれており、カツオだしのイノシン酸とうま味相乗効果を生じるのではないかと考えました。うま味相乗効果として最も知られているのが昆布だし(グルタミン酸)とカツオだし(イノシン酸)とのうま味相乗効果です。昆布とカツオのうま味相乗効果はよく知られた現象であり、料理のコクを引き出すために和食でよく利用されます。本研究では緑茶とカツオだしとの間にも同様の効果があるのではないかと考え検証しました。

[研究内容 ①]
12名の被験者に緑茶とカツオだしのモデル試料を提示し、緑茶とカツオだしの間でうま味相乗効果があるかどうかをサイクリック一対比較法という比較試験法を用いて検証しました。評価サンプルは、緑茶モデル・カツオだしモデルを1:1で混合した混合モデル、混合モデルに250ppm・500ppmの緑茶カテキンをそれぞれ添加した混合モデルの計5種類としました。本研究では緑茶とうま味のモデル試料の混合によるうま味相乗効果の検証、および緑茶カテキンがうま味相乗効果に及ぼす影響について検証することを目的とした。

【結果 ①】
緑茶とカツオだしとの間に強いうま味相乗効果があることが確認されました。この研究から、食中の緑茶の飲用がうま味相乗効果により和食のコクを増強させる可能性があることが示唆されました。しかしながら、このうま味相乗効果はカテキン量が依存的に抑制されるため、緑茶飲料の処方が緑茶と和食のうま味相乗効果にとって非常に重要であることも示されました。

≪経緯 ②≫
日本酒・ワインなどのアルコール飲料と和食のペアリングがウェブサイトや書籍で数多く紹介されていますが、清涼飲料水(ノンアルコール飲料)と和食のペアリングについてはほとんど考慮されていないのが現状です。飲食店においても、アルコール飲料が飲めない方に提供する飲料について考慮されていない場合があるため、清涼飲料水と和食のペアリングに関する研究の需要は高まっているといえます。本研究では清涼飲料水もアルコール飲料と同様に和食の感覚特性やおいしさに影響を与えると考え、清涼飲料水と和食のペアリングについて検証しました。

[研究内容 ②]
本研究では6種類の飲料(水・水出し緑茶・煎茶・ほうじ茶・有糖飲料・果汁飲料)と和食として筍の土佐煮を使用しました。飲料が和食(筍の土佐煮)の感覚特性とおいしさに与える影響はTemporal Drivers of Liking (TDL)(※)という評価手法を使用し、17名の被験者に対して(図1)の手順に従い実施しました。和食(筍の土佐煮)を食べる直前の飲料を6種類、それぞれ変えていくことで和食の感覚特性がどのように変わるかを解析しました。

(※)  Thomas, A., Visalli, M., Cordelle, S., & Schlich, P. (2015). Temporal Drivers of Liking.Food Quality and Preference, 40(PB), 365–375.

図1:評価手順

【結果 ②】
和食(筍の土佐煮)を食べる直前に飲む飲料によって筍の土佐煮の感覚特性が大きく変わることが示されました(図2)。例えば、うま味の強い水出し緑茶を飲んだ場合は、筍の土佐煮の「うま味」や「甘味」の感覚特性が大きくなっていることが示されています。一方で渋味の強い煎茶(熱水抽出)や有糖飲料・果汁飲料は「飲料の味」「飲料の香り」の感覚特性が著しく強く、直前に飲んだ飲料の特性がその後の料理にまで残っていることが示されています。
また、得られた結果をさらに詳細に解析すると「飲料の味」や「飲料の香り」は、ほとんどの飲料で好ましさを低下させる要因であることが分かりました。飲料由来の味や香りが和食を味わう時まで残っていることは、素材本来の味を大切にする和食にとって好ましくないことかもしれません。一方で、うま味の強い水出し緑茶を飲んだ場合に引き立てられる「うま味」の感覚特性は好ましさを向上させる要因であり、和食をより味わい深くする可能性が示唆されました。

図2:飲料が和食の感覚特性に与える変化
緑文字 : 好ましさの向上に寄与している感覚特性
赤文字 : 好ましさの低下に寄与している感覚特性

水出し緑茶 : 水出しすることで渋味を抑えた、うま味の強い煎茶
煎茶 : 熱水抽出しているため強い苦味・渋味が残る

以上の研究成果により、緑茶は和食(特にカツオだしをベースとした料理)のうま味を引き立て、和食のおいしさの向上に寄与していることが示唆されました。
今後は様々な和食料理と緑茶との相性を科学的に明確にして体系化し、国内外に向けた緑茶と和食の訴求、および緑茶の飲用提案を進めてまいります。