テアニン摂取による中枢神経興奮作用緩和を確認-カフェインの作用を緩和-

愛媛県立医療技術大学との共同研究内容を「日本食品科学工学会 第61回大会」で発表

株式会社伊藤園(社長:本庄大介 本社:東京都渋谷区)の中央研究所は、愛媛県立医療技術大学の岡村法宜助教との共同研究で、カフェイン摂取による中枢神経興奮に対するテアニンの効果を、ヒトを対象とした試験で確認しました。この結果の詳細は、8月30日(土)に中村学園大学(福岡県福岡市)で開催された「日本食品科学工学会 第61回大会」で発表いたしました。

≪ 経緯 ≫

カフェインは覚醒作用を有し、眠気防止や倦怠感の防止のために滋養強壮剤などに使用されています。その反面、摂取による不眠などの症状を引き起こすことが懸念されています。

緑茶にはカフェインが含まれていますが、茶特有の旨み成分であるテアニンも含有しています。これまでに動物実験でテアニンがカフェインの興奮作用を抑制することが報告されており1)、緑茶ではカフェインの副作用が軽減されると考えられています。しかしながらこれまでの報告は動物の試験であり、ヒトで証明されているデータはみあたりません。そこで今回の試験では、茶飲料に含有する程度のカフェインによる覚醒作用を緑茶に含有する程度のテアニンが抑制できるか、ヒト試験で証明することを目的として実施しました。

1)Kakudaら、 Biotechnol. Biochem., 64(2),287-293(2000)

 

≪ 研究内容 ≫

健康な21~22歳の男女大学生12名(男1名、女11名)を対象として、シールドルーム2)内で、被検者を脳波測定用チェアに背もたれをたてた状態で座らせて中心正中線部脳波、前頭葉血流などの測定を行いました。摂取飲料は、飲料A(カフェインもテアニンも含まない対照飲料:対照群)、飲料B(テアニン50mgを含む飲料:テアニン単独群)、飲料C(カフェイン100mgを含む飲料:カフェイン単独群)、飲料D(カフェイン100mgに加えテアニン50mgを含む飲料:併用低用量群)、飲料E(カフェイン100mgに加えテアニン100mgを含む飲料:併用高用量群)としました。飲料摂取開始30分前から測定を開始し、飲料摂取60分後まで測定を実施しました。脳波は、脳波のパワースペクトラム3)から、徐波帯域(δ、θ)、α帯域、速波帯域(β、γ)の相対パワーを算出しました。

  • シールドルーム:音を遮断し、温度や照度を一定にできる脳波測定用の部屋。

  • 脳波のパワースペクトラム:5~8Hzを徐波帯域、8~13Hzをα帯域、13~40Hzを速波帯域として算出。閉眼し安静を保っている際には、多くのヒトでα波が主成分です。覚醒水準が低下するとα帯域の脳波が減少することが知られています。

 

≪ 結果 ≫

脳波のα帯域は、対照群(A)、テアニン単独群(B)では摂取15分後以降で直後より有意な低値を示しました(p<0.01)。

一方、カフェイン単独群(C)、併用低用量群(D)では飲料摂取直後のα帯域の水準を維持しましたが、併用高用量群(E)では、飲料摂取後低下が認められ、摂取25分後以降摂取直後より有意に低下しました(p<0.01)。

脳波の徐波帯域は、α波と逆の挙動を示し、対照群(A)、テアニン単独群(B)では摂取15分後以降で増加、カフェイン単独群(C)、併用低用量群(D)では減少しましたが、併用高用量群(E)では、高値を維持しました(p<0.01)。

ほかの評価項目では、併用高用量群(E)のみ、飲料摂取25-30分後、前頭葉の相対血流は有意な高値を示しました(p<0.01)。

 

以上の結果から、ヒト中枢神経系においてテアニンはカフェインの中枢神経興奮作用を抑制する可能性が明らかとなりました。さらに、テアニン摂取により、カフェインによる睡眠障害の抑制の軽減が期待できると思われます。

当社はお茶を中心とした食品を通じ、幅広く健康との関連について研究を進めております。未知の可能性を秘めているさまざまな有効成分の研究とともに、その活用方法について、今後も提案し続けてまいります。