茶カテキンのコレステロール吸収抑制メカニズムの一部を解明

東北大学大学院、静岡県立大学大学院との共同研究、「第68回 日本栄養・食糧学会大会」にて発表。

株式会社伊藤園(社長:本庄大介 本社:東京都渋谷区)の中央研究所は、東北大学大学院農学研究科の池田郁男教授、静岡県立大学大学院薬食生命科学総合学府の熊澤茂則教授らと共同研究を行い、茶カテキンのコレステロール吸収抑制メカニズムの一部を解明しました。
この研究結果は、アメリカ化学会の学術誌「Journal of Agricultural and Food chemistry」の62巻13号(2014年4月2日発刊)にて論文(※)発表し、5月30日(金)から酪農学園大学(北海道江別市)で開催された「第68回 日本栄養・食糧学会大会」で発表いたしました。

※ Epigallocatechin gallate decreases the micellar solubility of cholesterol via specific interaction with phosphatidylcholine.(エピガロカテキンガレートはホスファチジルコリン(主要なリン脂質の一種)との特異的相互作用を介してコレステロールのミセル溶解性を低下させる)

≪ 経緯 ≫

当社は、緑茶に含まれるカテキン類、特に『ガレート型カテキン』の血清コレステロール低下作用を、既に複数のヒト試験において確認しています。このメカニズムは、ガレート型カテキンがコレステロールと結合することでコレステロールの溶解性を低下させ、コレステロールの吸収を抑制するためと考えられてきました。今回、どのようにガレート型カテキンとコレステロールが結合するのか明らかにしようと研究を実施しました。

≪ 研究内容 ≫
食事などで消化管に流入したコレステロールは、消化管内に分泌される胆汁酸とホスファチジルコリンとともに胆汁酸ミセル※に溶解してはじめて吸収されます。胆汁酸ミセルへのコレステロールの溶解性を下げることができれば、コレステロールの吸収も下がります。
そこで人工的に胆汁酸ミセルを作成し、コレステロールの溶解性について、エピガロカテキンガレート(主要なガレート型カテキン)の影響を調べました。その結果、エピガロカテキンガレートが胆汁酸ミセルへのコレステロールの溶解性を下げるには、主要なリン脂質の一種、ホスファチジルコリンが必要であることがわかりました。さらにNMR(核磁気共鳴)法等を用いた解析により、胆汁酸ミセル中でエピガロカテキンガレートとホスファチジルコリンが結合していることが確認されました。また、エピガロカテキンガレートとコレステロールは直接結合するという知見は得られませんでした。

これらの結果から、エピガロカテキンガレートは、コレステロールと結合することでコレステロールの吸収を抑制するというこれまでの説は、正しくなかったことがわかりました。よって、エピガロカテキンガレートは、ホスファチジルコリンと結合することでコレステロールの吸収を抑制するという考えを新たな説として提示しました。

胆汁酸ミセル: コレステロールや中性脂肪分解物(脂肪酸など)はそのままでは水に溶けないため、吸収されません。これらを吸収するために、消化管内に胆汁酸が分泌され、コレステロールや中性脂肪分解物とともに胆汁酸ミセルという親水性の微細粒子を形成します。

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しかし、エピガロカテキンガレートとホスファチジルコリンとの結合が、なぜコレステロールの胆汁酸ミセルへの溶解性を低下させるのかはまだ解明されておらず、さらに研究を進めてまいります。

当社はお茶を中心とした食品を通じ、人々の健康維持に貢献できるよう、研究を進めております。未知の可能性を秘めているさまざまな有効成分の研究とともに、その活用方法について、今後も提案し続けてまいります。