茶殻リサイクルシステムが
未来をかえる
茶殻リサイクルシステム
の全体像
これまでも茶殻は、飼料や推肥として活用していました。一方で伊藤園は、「お~いお茶」の生産量が増えていくとともに茶殻の排出量が増加していることから、茶殻に含まれる様々な機能性を飼料や堆肥以外でも活用できるのではと考え、茶殻のリサイクル研究に着手しました。
茶殻は多くの水分を含んでいて温度が高いため、腐敗しやすい特徴があります。そのため、日用品や工業品の代替原料として使用するには乾燥工程が必要と考えられてきました。しかし、乾燥には化石燃料等の消費や二酸化炭素の発生が伴います。そのため、含水のままの茶殻を保存・輸送する技術が求められますが、これまで確立ができていませんでした。
そのような中、2001年に茶殻を含水のまま常温保存(輸送)して、工業製品の代替原料に活用する独自技術「茶殻リサイクルシステム」を確立しました。この技術により、これまで必要としていた乾燥工程も不要となったため、通常茶殻を代替原料化する際に生じる燃料消費や二酸化炭素発生も抑制します。この技術確立以来、多くの「茶殻アップサイクル(リサイクル)製品」を、様々な協力企業と共に開発しています。
茶殻のアップサイクル
伊藤園では、国内の飲料製造工場を通じて年間で数万トンの茶殻を排出しています。その多くは飼料や推肥としてリサイクルしていますが、このうち一部の茶殻を「茶殻リサイクルシステム」を用いてアップサイクル(リサイクル)しています。一方で、昨今の国内農業の課題「農地面積の減少」を背景に、工場近隣の農地減少などが要因となり、茶殻が飼料や堆肥として有効利用しづらい地域もあります。そこで伊藤園は、数十年後の未来を考え、近隣農地が減少している国内の3つの工場をモデル工場として、各工場で排出する茶殻のうち約10%をアップサイクル製品に有効活用しています。
アップサイクルとは
アップサイクルとは、元の製品に機能を加えて付加価値を上げることです。サステナブル(持続可能)なものづくりの新たな方法論のひとつで、従来のリサイクル(再循環)と異なり、単なる素材の原料化やその再利用ではなく、元の製品よりも次元・価値の高いモノを生み出すことを、最終的な目的とするもの。
アップサイクルの製品例
伊藤園が使用する営業車両などのトラックの架台には、軽量化と強度確保のためアルミ材が多く使用されていますが、アルミ材など非鉄金属は世界情勢の影響を受けやすく安定供給に課題があります。そこで、「茶殻リサイクルシステム」により“茶殻”をアップサイクルした茶殻配合樹脂を応用して「茶殻配合軽量パネル」を協力会社とともに2022年に開発しました。このパネルを、営業車両の架台部分(スライドドアやバックドア、床材)に採用することで、非鉄金属の使用量を削減するとともに従来車両と比較して最大で110kgの軽量化に成功しました。さらに、スライドドアやバックドアの開閉時に必要とする力を、従来と比較して約1/3に省力化することも実現しました。
人工芝用充填材を開発
一般的に人工芝は、利用者の膝や腰に負荷のかからないようクッション性を高めるために黒ゴムチップを充填材として採用していますが、黒ゴムチップは太陽光などの熱を吸収するなどの課題があります。そこで伊藤園は、表面温度上昇抑制効果がある人工芝用充填材『FieldChip「Greentea」(フィールドチップ「グリーンティー」)』を協力会社とともに2018年に開発しました。この充填材は、黒ゴムチップの充填材と比較して表面温度の上昇を約7℃抑制し、サッカー場1面あたり大気中にある約4.3t-CO2の二酸化炭素を削減(固定化)します。なお、約4.3t-CO2はサッカーボールに換算すると約12,000個分です。