3つの重点テーマ

研究開発レポート

レポート01
茶カテキンの種類で変わる健康効果
~悪玉コレステロールを低下させる 『ガレート型カテキン』 ~

健康寿命への関心が高まる中、「コレステロール」特に悪玉コレステロールを気にされる方が増えています。 茶のポリフェノールであるカテキンとコレステロールの関係は、1980年代から本格的に研究され始めました。ヒトにおいては疫学的な研究から、コレステロールについてお茶の効果が期待されてきたものの、カテキンの効果であるとは証明されていませんでした。まして、カテキンに種類があり、特定のカテキンの種類によって効果に差があるなどとは、誰も予想していませんでした。
伊藤園では、あるカテキンにコレステロールの吸収を特徴的に阻害する効果があることを発見し、機能上の分類としてカテキンを『ガレート型カテキン』と『遊離型カテキン』の種類に分けて研究を進めました。
そして、『ガレート型カテキン』を含んだ飲料でヒト試験を行い、その効果をついに科学的に証明することができました。

1.お茶とコレステロールの関係

コレステロールは、細胞膜やホルモンの材料となるなど、人の体にとって、とても大切な成分です。コレステロールには種類があり、血管を通って体内の各組織の細胞にコレステロールを運搬する「LDL(悪玉)コレステロール」とコレステロールを各組織から回収する「HDL(善玉)コレステロール」の2つに分けられます。その割合は、健常な時は肝臓できちんとコントロールされています。 しかし、生活習慣の乱れなどから、血液中の悪玉コレステロール濃度が高い状態が長く続いてしまうと、コレステロールは血管の内側に入り込んで蓄積してしまいます。その結果、血管が狭くなって血流を悪くし、脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクを高めてしまいます。

コレステロールは食事から摂取するほか、体内でも作られます。 油の消化・吸収を助ける消化液の一種であり、胆嚢(たんのう)から出る「胆汁(たんじゅう)」もコレステロールなどをもとに肝臓で作られているため、コレステロール自体を含んでいます。 胆汁は食事の際に小腸に分泌され、油の消化・吸収を助けた後、肝臓へ回収されて再利用されます。

天ぷら

お茶とコレステロールの関係は1980年代以降、疫学的な検証が行われ、1日10杯以上の緑茶を摂取した人はコレステロール値が低いなどの報告があります。 またラットにカテキンを摂取させた試験では、コレステロール値の低下が確認されたことから、お茶の主成分であるカテキンが、コレステロール値を低下させるのではないかと考えられてきました。

2.カテキンがコレステロールの吸収を抑制する

伊藤園は、カテキンがコレステロール値を低下させるメカニズムを解明するため、コレステロール研究の第一人者である池田郁男教授(東北大学未来科学技術共同研究センター)と共同研究を行いました。 その結果、カテキンがコレステロール吸収の抑制効果を持つことがわかりました。また、すべてのカテキンが同じようにコレステロール吸収の抑制効果を持つのではなく、「ガレート型」カテキンに特徴的な効果だということがわかりました。 コレステロールは脂質の一種なので、そのままの状態で体内に吸収されることはありません。 胆嚢から出る胆汁によって作られる“胆汁酸ミセル”と呼ばれる小さな脂質粒子に溶解した後、小腸で吸収されます。その吸収のプロセスを「ガレート型カテキン」が阻害し、コレステロールの吸収を抑えます。吸収されなかったコレステロールは、体外に排泄されます。 食事中のコレステロールだけでなく、胆汁に含まれるコレステロールも再吸収が抑制され、体外に排泄されると考えられました。

コレステロール吸収抑制のしくみ

3.カテキンには種類がある~効果が高いのは「ガレート型」

カテキンという名称は、主に8種類あるカテキンの総称です。そのうち、元々茶葉に含まれるカテキンは4種類。ペットボトルなどに飲料化する過程の加熱殺菌によって、カテキンは熱異性化が起こり、飲料中のカテキンの約50%が熱異性体となります。 従来は、この異性体が測定できなかったため、「加熱殺菌するとカテキン量が減る」と考えられてきました。現在は、その測定が可能となり、加熱殺菌程度では総カテキン量は大きく減らないことが分かっています。] そして、この異性体も「ガレート型」だけが同様の効果を持つことが分かりました。

4.ヒト試験で悪玉コレステロールの低下を実証

これまでの報告から、伊藤園では1日あたりの有効摂取量を算出し、成人男女60名(男性38名、女性22名)を対象とし、12週間の食事介入試験を実施しました。健常成人男女で20歳以上の血清総コレステロール値が高め(180~260mg/dl)の方60名を2群に分け、ガレート型カテキンを197.4mg配合した飲料を1日2本、12週間摂取させました(ランダム化比較試験、二重盲検)。 その結果、総コレステロール値、LDL-コレステロール値ともに有意な低下が認められました。この効果は、特に男性被験者で顕著に表れました。

Kajimoto et al., J Clin Biochem Nutr, 33, 101-111, 2003

5.女性でも有効性を確認

女性は、一般的に女性ホルモンがLDL-コレステロール値に影響を与えるため、血清コレステロール値が生理周期の影響を受けやすいことが知られています。 そこで、ガレート型カテキンの女性に対する効果を検証するため、生理周期の安定した、総コレステロール値が高め(180~260mg/dl)の女性132名を対象として、先の試験と同じ飲料を用いて12週間の食事介入試験を実施しました。 その結果、男性同様に総コレステロール値、LDL-コレステロール値ともに、有意な低下が認められました。

試験方法

25~65歳の健常で、血清総コレステロールが高め(180mg/dL~260mg/dL)の女性132名を2群(対照群:67名、カテキン群65名)に分け、 茶カテキン196mgを含む試験飲料を朝夕、食事の際に各1本、12週間摂取。

Kajimoto et al., Health Science, 22, 60-71, 2006

いずれのヒト試験でも、コレステロール関連以外の血液検査値には顕著な変化は認められませんでした。さらに、貧血に関する指標や血清ミネラルの顕著な変化は認められず、有害事象も観察されませんでした。

伊藤園は、長期ビジョンとして世界中のお客様に「お茶」の伝統から最先端の技術に至るまでの価値をお届けして生活提案を行う「世界のティーカンパニー」を目指しています。今後も、長年培ってきた技術力を活かしつつ、新たな研究分野へもチャレンジを続け、持続可能な成長を追求してまいります。

共同研究者より

お茶とコレステロールの研究は、1986年に静岡大学のグループが、動物実験にてカテキン摂取でコレステロールが下がると報告したのが最初です。 その後、伊藤園さんから我々に共同研究の依頼がありました。ちょうど、コレステロールのリンパへの吸収を調べる技術を持って米国から帰ってきたところでした。 あの当時、さまざまな種類の物質でコレステロール吸収抑制の実験を行っていましたが、その中でも際立ってカテキンのコレステロール吸収の抑制作用が強かったですね。どうしてコレステロール吸収を阻害するのか調べることになり、そんなに簡単に解明できないだろうと思っていましたが、最初に行った実験で見事その結果が出て、すぐに論文発表となりました。1992年のことでしたね。その後、本格的に共同研究を行うことになり、作用機序の解明を担当しました。

共同研究者

東北大学未来科学技術
共同研究センター
池田郁男教授

我々の研究結果から、コレステロール値を低下させるためには、食事とともにガレート型カテキンを摂取することが効果的であることがわかりました。 日々の食生活に、お茶のガレート型カテキンを取り入れることで、コレステロール対策ができると考えられます。
この共同研究は、産学連携の走りみたいな研究でした。それがうまくいったので、成功例といっていいのではないでしょうか。

< 関連文献 >

論文

  • 1) 野澤歩、杉本明夫、永田幸三、角田隆巳、堀口倫博, 茶カテキン配合飲料の血清コレステロール値低下作用, 健康・栄養食品研究, 5, 1-9, 2002
  • 2) Kajimoto, O.; Kajimoto, Y.; Yabune, M.; Nozawa, A.; Nagata, K.; Kakuda, T. Tea catechins reduce serum cholesterol levels in mild and borderline hypercholesterolemia patients. J. Clin. Biochem. 2003, 33, 101–111.
  • 3) Kobayashi, M.; Unno, T.; Suzuki, Y.; Nozawa, A.; Sagesaka, Y.; Kakuda, T.; Ikeda, I. Heat-epimerized tea catechins have the same cholesterol-lowering activity as green tea catechins in cholesterol-fed rats. Biosci. Biotechnol. Biochem. 2005, 69, 2455–2458.
  • 4) Kajimoto, O.; Kajimoto, Y.; Takeda, M.; Nozawa, A.; Suzuki, Y.; Kakuda, T. A beverage containing tea catechins with a galloyl moiety reduce serum cholesterol level in hypercholesterolemis womens. Health Sci. 2006, 22, 60–71. in Japanese with English summary.
  • 5)小林誠、鈴木裕子、野澤歩, ガレート型カテキンの血清コレステロール濃度低下作用, 日本消化吸収学会誌「消化と吸収」2009, 32, 58–64.
  • 6) Kobayashi, M.; Nishizawa, M.; Inoue, N.; Hosoya, T.; Yoshida, M.; Ukawa, Y.; Sagesaka, YM.; Doi, T.; Nakayama, T.; Kumazawa, S.; Ikeda, I. (2014). Epigallocatechin gallate decreases the micellar solubility of cholesterol via specific interaction with phosphatidylcholine. J. Agric. Food Chem. 2014, 62, 2881–2890.

ニュースリリース等

  • ・茶カテキンのうちガレートエステル型カテキンを一日 394mg 摂取することにより、血清総コレステロール値およびLDL(悪玉)-コレステロール値の有意な低下が認められることを確認(2004年6月4日)
  • ・ガレート型カテキンの継続的な摂取による「体脂肪低減効果」「女性のコレステロール値低下作用」を確認(2007年6月7日)
  • ・茶カテキン配合飲料とコレステロール低下剤の併用試験結果について(2011年11月18日)
  • ・茶カテキンのコレステロール吸収抑制メカニズムの一部を解明(2014年6月6日)

注)組織名、役職等は掲載当時のものです(2018年9月)